蓮池通信
子ども×神奈川県立美術館・鎌倉館

蓮池通信ブログ

本サイトは、横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉小学校の子どもたちと神奈川県立近代美術館鎌倉館との交流から生まれました。 これまでの交流記録をはじめ、現在の活動の様子や子どもたち自身が日々感じていることをブログで少しずつ発信していきます。

ミナモの波紋のように、だんだん広がって、大きくなることを願って…。

<< 蓮池を書く | ブログのトップ | 雲 >>

投稿者: grouprough

蓮池を書く

2008.07.22 Tuesday


6月1日に行われた小説家 島田雅彦さんのワークショップ「蓮池を書く」に子どもたちが参加しました。そのワークショップで生まれた作品を紹介します。


池の中のアーティスト            神楽(中学1年)

池の中で人気のないボク。
名前は小池蓮。
だけどそんなボクにも楽しみにしていることがある。それは池のみんなが寝静まった夜、泳ぎながら池の底の土で絵を描くのだ。大きな池全部を使って、自分の想像した絵、それも人間や動物の住む世界を描くのだ。とっても楽しい自分だけの秘密の時間…。

ある日、ボクはいつものように絵を描いていた。けれど、いつもと何か違う。誰かの視線を感じた。この池には小さな島がある。そこは時々人間が来る場所だった。そう、その視線はその島からボクの絵を見ていた人間だった。その人はボクの絵を見てボソッとつぶやいた。
「なにこれ?変なの。」
ボクは「なんだこの人?」と思ったけど絵を描き続けた。でも気分がのらない。ボクはあの人のひとことがひっかかっていた。「ボクはただ描きたい絵を正直に描いているだけなのに…」結局その日、ボクは絵を描けなかった。

次の日はあの人の姿が見えなかった。けれど、あの人の言ってたことが気にくわない。そう思いながら、気分がのらないまま毎日を過ごしているうちに月日が経っていた。

またいつものように絵を描いていたが、ふと何かの視線を感じた。ボクは「またあの人だ。」と思ったけれど、島を見るとあの人じゃなくて、ため息をついている女の人だった。その女の人はボクの絵を見て笑ってくれた。ボクはとってもうれしかった。それから毎日その女の人はボクの絵を見にきてくれた。ボクはいつの間にかその女の人と仲良くなっていた。ある日その女の人は言った。
「池のみんなは、あなたが絵を描いていることを知ってるの?」
ボクは「いや、知りませんよ。」と笑いながら答えると、
「池のみんなに教えたら?」と言ってきた。
ボクはビックリした。みんなに教えてもどうせ無反応だと思ったからだ。
「無理ですよ、そんなこと。」と言ったけれど、
その人は「じゃあ明日の昼に発表しようね。」と言ったまま帰ってしまった。
ボクは戸惑って何も言えなかった。

そして朝を迎えた。ボクの絵をみんなに教えることはイヤだったけど、初めてボクの絵を見て笑ってくれた人が言うことだから…。

そして約束の昼がきた。あの女の人がやってきて、ボクに今日の計画を話し始めた。
「まずはじめに池のみんなを集める。そして絵を発表!!」
ボクは「そのまんまじゃないですか!」と言った。
そうしたら「い〜の。気にしなくて!」とかわされた。

いよいよ計画を実行にうつした。女の人は陸の近くに住んでいるみんな、ボクは女の人が行けない池の中のみんなを呼びに行った。みんなゾロゾロ集まってきた。いよいよ絵の発表!!というところまできた。さすがに急に呼ばれたみんなもビックリしているけれど、よっぽどボクの方がビックリしていた。あんなに人気のないボクのことなのに…。

女の人が司会を始めた。
「池のみなさん!こんにちは!!今日はコイの小池蓮くんが絵の発表をします。」
ボクはいつものように絵を描き始めた。ボクはみんなの様子をうかがいながら描いた。「みんなどうせ無反応だ」と心の中で思った。でも女の人のためだと思ってがんばって描いた。

そして描き終えた。みんなの反応は?と思いながらみんなの方を向いた。
・・・・・。

みんなの顔は無表情だった。やっぱりダメかと思った瞬間、みんながボクの方に集まってきた。
そして、「すごいね!!」「すばらしい絵だ!!」「もっと君の絵が見たい!!」…。
たくさんの仲間がボクの絵をほめてくれた。ボクは言葉にできないくらいうれしかった。

それからというもの、ボクは池の人気者になった。すべてあの女の人のおかげだ。今もボクは池の中のアーティストとなってみんなのために絵を描き続けている。

Photo by Ken Kato

ワークショップ | 10:52 | comments(0)

コメント

コメントする

 



(C) 2019 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.

このページの先頭へ

最近の記事

カテゴリー

過去の記事

記事を検索

最近のコメント

XMLフィード

RSS1.0 | Atom0.3

copyright © 2008 Tomoyuki Takamatsu, all right reserved.