蓮池通信
子ども×神奈川県立美術館・鎌倉館

蓮池通信ブログ

本サイトは、横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉小学校の子どもたちと神奈川県立近代美術館鎌倉館との交流から生まれました。 これまでの交流記録をはじめ、現在の活動の様子や子どもたち自身が日々感じていることをブログで少しずつ発信していきます。

ミナモの波紋のように、だんだん広がって、大きくなることを願って…。

<< 『鎌倉なんとかナーレ2012』(なんとかフィナーレ) | ブログのトップ | 近況報告 >>

投稿者: grouprough

なんとかフィナーレを迎えることができました

2012.12.04 Tuesday


なんとかナーレ前日。歴代の非属っ子たちが偶然集結。フィナーレに向けて確かな手ごたえをつかんでいました。


現役小学校の機能を一時停止し、あえてカオスにする3日間のはじまり。


昇降口は、小中学校児童生徒約1200名が表現した『1/1200の私』と瀧澤潔さん(現代美術家)指導の下、子どもたちが制作した『HANGER WALL KAMAKURA』がお出迎え。


小学校1年生から中学校3年生の約1200作品の中から自分の作品をみつけることができるかな。


作品の外側と内側では表情が異なる。



3階の渡り廊下は、4年1組の子どもたちが1か月以上かけて収集した校内の廃棄物を展示。
題名は『ゴミの卒業式』。この作品は4年1組の児童が発想から展示までやり遂げました。

会場では、子どもたちが録音したゴミの悲痛な叫びが流れていました。


現役小学校で給食を食べようというこの企画は、一般来場者の方々に大好評でした。


チケットはあっという間に完売。食を通して鎌倉小学校を身近に感じてもらえたと思います。栄養士の先生と調理士の皆さんはすでに次なる妄想に入っています。


滝沢達史さんの『DOWN TOWN』。ラインカーで街を描き、自分の敷地内では”自己責任”のもと何をしても自由という画期的な企画。早速子どもたちは”大人立入禁止”と描いて焚き火の準備でしょうか。また、駐輪場を描いて翌日学校に自転車で来る計画を立てていました。


大人もテントを張ってBBQやもつ鍋大会。駐車場を描けばグランドに車も入れます。


こちらは2009年に美術家の景山健さんにつないでいただいたご縁がきっかけで、ずっと関係をあたためてきた新潟県津南町の方々による農作物即売会。今では5年生全員が秋と冬に津南町で廃校となった三箇小学校に宿泊学習に出かけるまでに発展しました。


秋にお世話になった5年生も恩返しに販売のお手伝い。津南の幟をもって小町通りにも営業活動もしました。おかげさまで完売になりました。


是枝開(プロ)『オエイシスを探しにゆこう』
来場者一人ひとりが自分にとっての”オエイシス”を絵や言葉で表現しました。


鎌倉彫の後藤久慶さんによる作品展示と公開制作。後藤さんの作品はいわゆる鎌倉彫ではなく、シンプルでモダンなデザインのものが多い。


ピアニストの寒川晶子さんによるソロ演奏会。すべての鍵盤が“ド”という特殊調律のピアノによる演奏は、不思議な魅力がありました。


低学年グランドでは、アーティストの荻原貴裕さんの『レジャーな石庭』。レジャーシート180枚を6年生の児童とともに敷き詰めました。


こちらは6年2組の児童が制作した『傘ハウス』。『HANGER WALL』の瀧澤潔さんから譲っていただいたビニル傘300本で巨大ジャングルジムを覆いました。海の研究を続けてきたクラスだけあり、その気はなくともクラゲに見えてくる。


傘ハウスの中では6年2組のGODO組が4ヶ月間かけて制作した自らの身体を使ったパラパラ映画『YUYA伝説』の上映会を行いました。子どもから大人まで画面に釘付けでした。


こちらは体育館。佐藤知司がプロデュースした児童劇団の公演会。子どもたちはすっかり劇団員として鍛えられ、その成果を惜しみなく発揮していました。


演劇の舞台したの”奈落”では、妄想彫刻家の益田有希子さんと4年3組児童のコラボ展示を行いました。彫刻作品の周辺に設置しているタマゴは、児童が数ヶ月間かけてヤスリで磨いたブナの木。作家さんの作品とともに展示することでこれまでとは違う輝きを放っていました。


ご近所の幼稚園から先生と園児が遊びに来てくれました。


『ゴミの卒業式』は毎日いろいろな方から絶賛の声。


アーティストの池田拓馬さんと安達七佳さんのコラボ展示。いつもは学年集会で賑わう大教室の空気が一変していました。


6年3組の児童が制作した作品。ジーンズを液体年度で固め、ユーモアのある展示にしました。上半身がないだけに鑑賞者の想像力をかきたてていました。


アーティストの小沢裕子さんが映像の展示を行った場所は3階音楽室前トイレでした。非日常のトイレは大人気でした。


保健室では、画家の横山大河さんと本田雄揮さんの2人展を開催。


これでもかというくらい風景画を保健室に放り込んでいただきました。一般の方にとって保健室はもっとも懐かしい場所ということもあり、連日大盛況。


怪我や病気だけでなく保健室に来室する児童はたくさんいます。今後も”保健室×アート”の試みを日常的に継続し、養護教諭と児童のコミュニケーションにおける効果を検証していきます。


エースナカジマ(アーティスト)による『教室に文字』。壁や黒板、机は文字だらけ。こんなカオスな中でも先生と児童は平然と授業から帰りの会まで行います。”変””非日常”を受け入れる素地ができあがりつつあります。


6年1組児童がこれまで担任の先生と学習してきた社会科の課題を、インスタレーションという手法を使って表現しました。


題名は『光と影のインスタレーション』。メディアの一つである”新聞”で隙間なく覆われた教室。灯りを消し、ロウソク1本の暗い教室でじっくり目を凝らして見えてくるのは、屠場の現場や今日も続く成田空港闘争の写真。社会の影の問題は、目を凝らさないと見えてこないという趣旨でした。6年生児童が発想し、カタチにしたことは、一般来場者から高い評価をいただきました。


ジェームス・タレルが大好きな美術委員会の児童が発案し、委員会メンバーと共に制作した『クロマメガーデン』。タレルの白ではなく、黒の中にポッカリ浮かび上がる空もなかなかいいものでした。空が近く、つかめそうな錯覚に陥る作品でした。


「君はオスか?メスか?」の問いかけからゼミが始まりました。理学博士の野口政止さんと信州大教授の金勝廉介先生に大学の研究室の空気をそのまま小学校の理科室に持ち込んでいただきました。サービスは一切なし。子どもたちは助手として3日間ウニの生態とカイコの研究をつづけました。


協力団体として参加いただいたのは貧困問題を扱う「特定非営利活動法人 オックスファム・ジャパン」。学校教育ではなかなか踏み込めない貧困問題の”構造”について、講演やワークショップをとおして考える時間をもちました。遠い世界の問題としてとらえていた子どもたちも、実は自分も世界の貧困を生み出している構造の中に生きていることの”自覚”が芽生えていました。


左は高学年児童約240名が書写の時間に書いた「1/240の私」。240人の私がプールの水面を漂流します。群れる「私」。群れから抜け出し「私」。風が吹けば流される「私」。動かない「私」。
右は3年生児童の作品『うつくぎ』。一人ひとり数え切れない数の釘をひたすら打ち続けました。展示の仕方で何倍もの輝きを放ちます。


非属の漫画家・山田玲司さんの講演会(特別授業)。絶対に学校の教員では立場上踏み込めない領域まで、赤裸々に語っていただきました。


世界で活躍する300名もの非属著名人との対話や自らの人生体験から得たお話には、思春期の子どもたちから大人までが目をまんまるくして聞き入っていました。あっという間の1時間。


フリーフォトジャーナリストの塩田亮吾さんの写真展を屋上階段で開催。バングラディシユの「砒素に侵される大地」を1秒の何分の1という短い時間に凝縮して作品にしている塩田さん。みる者に不条理な社会の抑圧や矛盾を感じさせる作品はすごい。



土日になると『DOWN TOWN』が盛り上がってきました。大人も子どもも日常の一線を超えるときはドギマギするもの。でも行為することでまた次の妄想がふくらみます。


横浜国立大学モダンダンス部と1年間継続的に身体表現に取り組んできた4年2組赤坂級のコラボダンス公演。今回は、学校を飛び出し、鎌倉市内でも踊りました。


『HANGER WALL』も日々少しずつ増殖しました。


最終日はダンスの1日。午前の横浜国大生と4年生児童のコラボ公演に続いて、午後は海外でも活躍する舞踏家・櫻井郁也さんのソロ公演。演奏は特殊調律のピアノ演奏家・寒川晶子さん、舞台美術は4年2組の書道の作品を用いて西川晶和さんと瀧澤潔さんに本校の教員や保護者が手掛けました。
広い広い体育館が、たったひとりの舞踏家の表現により空気が一変。約200名の観衆は非日常、まさに違和感を味わいました。この違和感こそ新しい教育を生み出すためにもっとも必要なことです。


フィナーレは、『DOWN TOWN』の村長であるアーティストの滝沢達史さんプロデュースによる『HAPPY BIRTHDAY』。なんとかナーレはこれで最後ですが、それは新しい学校のはじまりを意味します。それはつまり保護者の方々が”こんな学校があったらいいな”という妄想を書いた褌を燃やし、新しい学校の誕生を誓いました。


炎さえあれば、みているだけで十分。一人ひとりが様々なことに思いを巡らせたことと思います。


来場者が帰路につく時、校舎の上では何やら怪しい影が。
『鎌倉なんとかナーレ2009』で3色の巨大褌を巻いた校舎の上に教員と共に褌姿で仁王立ちした子どもたちです。なんとかナーレを盛り上げたそれで委員会の初期メンバー。彼らはもう中学校3年生。舞台が中学校になっても彼らは表現し続け、今年は彼らが所属する合唱団が全国で金賞に輝きました。



 本プロジェクトは、鎌倉小学校に主体的な行為と行為がつながって、新しい遊びやルールが生まれる“原っぱ”のような“間”を生みだしたい、そして、そのきっかけとして、既存の価値にはない一線を超えた試み、すなわち”アート”を取り入れようと2009年に始めました。学校(社会)が他とは異なる特別なサービスが受けられる“遊園地”と化しつつあると感じる昨今。その環境をつくっているのは子どもではなく、もちろん我々大人です。であるならば、“子どものため”と彼らに有り余るほどのサービスを施したり、夢や幻想を煽ったりするばかりではなく、まずは大人自らが既存の価値を越境して行為し、“自分たちの環境は自分たちで変えていける”という予感を掴むことが大切だと考えました。その意味で社会の風を敏感に感じながら、主体的に思考し、行為している大人の代表者として”アーティスト”に目を向けたわけです。

 ”学校カイホウ”を告げる花火で幕を開けた2009年。


鎌倉在住の美術家・景山健さんとの出会いからすべての妄想と行為が始まりました。


アーティストに感化された先生が主役となり、一個人として様々な表現行為を試みました。

校舎に巨大褌を巻き、児童らと校舎の上に褌姿で仁王立ちした先生やタイツ姿で体操のソロ公演を行ったりした先生の姿は圧巻でした。

子どもたちも負けていませんでした。図工の概念を崩し、日常の一線を超えた作品も誕生しました。


また、なんとかナーレを教育の場と捉え、子どもたちのスタンスで”社会”と関わらせようと試みた先生もいました。

1週間継続した『やきいも広場』は、なんとかナーレが目指したかった教育活動のもっとも理想的なカタチでした。子どもたちの失敗や葛藤を乗り越えた後の真の成長を目指すということ、そして予めレールを敷かず、サービスも一切排除した地域社会の人々を意識した活動は従来の学校行事にはないものでした。それまで学校空間に守られていた子どもたちには確実に危機感から行動力が生まれました。自分たちで行為し、社会とつながれる自信をつけた彼らは次年度、津南廃校生活を試み、現在の5年生全員が秋と冬に出かけるきっかけをつくってくれました。


 2010年はアートという縛りをなくし、過去最多のゲストを招いて開催し、一般来場者も1週間で2000名を超え、現役小学校が地域の”原っぱ”と化した瞬間に立ち会えました。


 「なんとかナーレ=何でもありの”文化祭”」というイメージが定着しつつあった2011年はあえて休止し、再び”アート”に舵を切っての今回のフィナーレ。主体的に行為できた人たちにとっては、アーティストの背中を見たり、制作をお手伝いしたりすることで、”一線を超える”ことの意味を体感でき、さらに妄想や行為をすることで「自分たちの環境は自分たちで変えていける」という予感が生まれたのではないでしょうか。子どもたちにこの予感を与えたくて日々授業を重ねている訳ですが、例えば瀧澤潔さんの『HANGER WALL KAMAKURA』を初めて見た方の多くは、その想定外の大きさから瞬時にこの感覚が呼び覚まされたのではないでしょうか。“アート”という不確かな言葉の意味がわかったような気がしました。また、妄想の街を描き、大人自らが一線を超えて行為しようと滝沢達史さんが企画した『DOWN TOWN』では、既存の価値に縛られることなく、“行為”できる機会となったでしょうか。私も集っていただいた方々とともに次年度以降の妄想を膨らませることができ、有意義な時間を過ごすことができました。

 この3年間、アートプロジェクトを試みた結果、はっきりとみえてきたことは、鎌倉小学校は我々にとって決して“マジックボックス”や”サービス機関”ではないということです。確かに本校は、他校と異なり一見特別と思えるような数多くの行事や宿泊学習を展開しています。しかし、鎌倉小学校だからといって、大人も子どもも受け身で安心することなく、主体的に“行為”しない限り、新しい世界は開けないということを再確認する機会となりました。
 先が見えない“アート”を掲げて始まった『鎌倉なんとかナーレ』ですが、鎌倉小学校においては体系化しつつあることから、今回でフィナーレを迎えることとしました。この“終わり”が新たな試みの“誕生”という意識のもと、今後は日常的に教員や保護者、子ども、そして地域社会の皆様と共に過去にとらわれず何か試みることができる学校にしていきたいと考えています。今後とも本校の教育活動にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
今まで本当にありがとうございました!(鎌倉なんとかナーレ決起人 眈 智行)



写真提供:はやしようこ氏

JUGEMテーマ:アート・デザイン

鎌倉なんとかナーレ2012 | 01:38 | comments(1)

コメント

今年の、いや3年間にわたる「なんとかナーレ」
の活動と趣旨がこれを読むと良く伝わってきました。

枝葉の派手さに目をうばわれがちですが
(それはそれで大事なことです)
根っこの部分は、現状の教育に対する
強烈なアンチテーゼです。
私たちは根っこを忘れてはならない。
これからもちがった形で根っこを継続する
鎌倉小でありたいですね。

サムライ | 2013/01/04 4:24 PM

コメントする

 



(C) 2018 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.

このページの先頭へ

最近の記事

カテゴリー

過去の記事

記事を検索

最近のコメント

XMLフィード

RSS1.0 | Atom0.3

copyright © 2008 Tomoyuki Takamatsu, all right reserved.